今日は私、JIRI担当の『森林文化論』で、中越パルプ工業株式会社の西村修部長さんをお迎えし
て、普段ふれることないパルプ会社のこと、その会社の様々な取り組みを講義頂きました。
中越パルプ工業は年間80万トンの紙を生産する業界第六位の中堅のパルプ会社で、B2Bの
素材メーカーです。
この会社が、「竹紙」や「生物多様性に配慮した「里山物語」というCRM( コーズ・リレイテッド・
マーケティング:Cause-related Marketing)に取り組んでいます。
ちなみにCRMは、事業活動と社会的課題の解決を 同時に実現しようというもので、具体的には
売り上げの一部を慈善事業などに寄付することを前提にした商品やサービス、もしくはその販売活
動を指します。
西村部長はパルプに加工する前のチップを持参し、パルプ加工する上で特にチップの厚みが
重要であること。 竹チップは硬いためチッパーナイフが痛みやすいことなども説明。
学生は初めて手に取るチップをしげしげと見る。
パルプ会社は相当な産業廃棄物を出すと考えている人も多いですが、それは誤り。チップを溶解
してパルプを取り出した残りの残渣廃液は「黒液」と呼ばれ、これも最終的に重油燃料の代用とし
て燃焼され、紙の乾燥に一役かっています。
2013年のパルプ材は、国産材506万トン、外在1061万トンと、輸入原材料が約70%を占めてい
る。針葉樹チップはアメリカやカナダからのものが多く、広葉樹チップはベトナムから来るものも
多い。・・・・普段使っている紙、その原材料の事なんて、普段は気にしてないよね。
学生には三種類の白い紙が配布され、それを触ったり、透かしてみたりして、原材料を考える。
広葉樹は繊維が短いが、しなやかで印刷用に向く紙ができる。針葉樹は繊維が太くて長いので
強い紙ができる。 竹は生産コストがかかるが、繊維が細くて長いのが特徴。
さて、ここから少し「竹紙」のお話し。
1998年からは日本一の竹林面積を誇る鹿児島県で、間伐された竹を原材料に竹紙を生産。
竹材の輸送費、加工費は木材の3 倍もかかるが、「本業を通しての地域貢献」につとめている
のです。
現在では年間2万トンの竹を集荷して、それをパルプ原料の一部に利用している。
竹林管理をしている人たちは、これまで放置したり、廃棄物として扱ってきた間伐竹材を現金化
することもできる。
中越パルプ工業は様々な活動を通して、第8回エコプロダクツ大賞「農林水産大臣賞」を受賞し
たり、第3回生物多様性日本アワード「優秀賞」を受賞したり、第1回ソーシャルプロダクツ・アー
ワード「ソーシャルプロダクツ賞」受賞など、周辺環境での評価も高いパルプ会社なのです。
こうした受賞歴の牽引立役者が西村部長なのです。西村さんからは「人とつながる」ことの大切
さも教えて頂きました。
間伐材の利用でも評価が高く、日本の製紙業界で利用される間伐材の半分以上を中越パルプ
工業が利用している。
間伐材活用による森林保全、寄付金による新しい里山保全、この2つを達成するため「里山
物語」という商品がある。
売り上げの一部を寄付する「里山物語」、様々な取り組みに毎年寄付してきたが、第4弾では
山梨県で「森のようちえん ピッコロ」を運営する団体に寄付。
今回の森林文化論の締めは、グループ討議。
西村部長による中越パルプ工業の取り組みをお聞きして、どのように感じたのか。どのような
質問事項があるのか。・・・・様々な意見が出てくる。
中越パルプ工業株式会社の資料には「紙だからこそできること」と記されていましたが、その
言葉の重みを感じたのは私だけでしょうか?
本業で社会に貢献できている日本では数少ない会社のお話を聞けて、大変面白い森林文化論
となったのです。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。