2015年11月8日日曜日

里山景観マイスター養成講座(Advanceコース)第3回:「連柿作り体験と獣害対策のための里山整備」


117日(土)に山県市伊自良地区・平井コミュニティセンターで第3回を実施しました。伊自良大実は11月上旬から収穫期を迎え、農家は連柿作りの最盛期を迎えます。約1ヵ月後には、「伊自良の連柿」として年末年始の贈答用に方々へ送られます。

 
 
そんな忙しい季節、今回も伊自良大実連合会の皆さんにご指導いただきました。午前中は、柿畑に侵入し住民の生活圏も侵しつつある獣害対策について学びました。

 

伊自良地区の生産森林組合が所有している山林は、集落を囲むように広がっています。その中で、既に補助金を入れて間伐・皆伐を実施した地区を見学しました。ここは約60年前にスギ・ヒノキを植林した山でしたが、今回の伐採で残念ながら利益は出ませんでした。

 


伐採区より上の斜面には、かつての「カナギの山」が広がっています。昭和30年代までは、燃料や食料などを得るために、住民は小さな子どもまでが山に入って木質バイオマスを採取していました。その上、松林が元気だったので、「コケ山」=キノコが採れる山として毎年自治会が主催で松茸山の入札を行い、随分と利益が出たそうです。

 


この山は、森林法に基づいて今後2年以内に植林をすることになりますが、これまで通りスギ・ヒノキを植えて単品の経済性を目ざすのか、自治会長さんも迷っておられるようでした。50年後の経済状況や需要は誰にも分からないわけですから、「経済規模は小さくとも様々な用途に対応できるよう、多様性のある森林に育てることも一案」と、柳沢先生からコメントがありました。
 
 


 

平井地区に隣接する長滝地区では、イノシシに荒らされた収穫直前の田んぼ、大型のサル檻を設置して効果を上げた現場なども見せていただきました。

 

 



 

 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
 
午後は、伊自良大実の干し柿作りの体験です。干し柿を1串に干し柿を3個刺し、それを10段重ねたものを「連柿」と言います。この姿のまま「福をかき(柿)集める」お目出度い贈答品として使われます。

 


まず、6月の実習で摘果作業をした柿畑に行って収穫作業をしました。あの頃より実が大きく膨らみ、重みで枝が垂れ下がっています。脚立に乗って作業をしますが、熟した実はヘタの部分が簡単に取れるんですね。

 



 
続いて、皮剥き作業です。ここで登場するのが「柿剥きカンナ」です。伊自良では竹の台にゼンマイの鋼を取り付けた手製のカンナを使います。地元講師の皆さんは、リズムよく剥いて行きますが、これがなかなかどうして・・、単純な道具で熟練の要る手作業こそ奥が深いのですね。

 

 
 
 
 
 
次は、柿を大きさ毎に分類して串に刺していきます。伊自良では直径を55分、5寸、45分の三種類に分けています。皮剥きした柿は滑りやすく、竹串に刺すちから加減が難しいのです。

 

最後は、3連になった串をワラで10段重ねる作業です。使用される稲わらは、連柿のためのわざわざ栽培されている穂の長い独特のモチ米です。このワラを捻じりながら10段重ね、最後の余った部分は縄状に綯っておきます。この作業も指全体を使い、微妙な力加減を必要とします。

 

 
 見すると単純そうな干し柿作りの中に、多数の手仕事の技が使われ、それらに適した素材を地域で守り育ててきたことが分かりました。農家の軒先にかざる「連柿の風景」とは、そうした作業が年長者から下の世代へ受け継がれ、柿畑を育てる農家の努力と周囲の里山に住む動物との住み分けのバランスが保たれて、初めて維持できるものだと、改めて理解することができました。

 

 
1123日(祝)には「連柿の里 ふれあい秋まつり2015」が平井コミュニティセンターで開催されますので、皆さんもお出かけになってみてはいかがですか?



 

報告:山村づくり講座教員 嵯峨創平