2012年2月13日月曜日

市場経済の中の林業

林業再生講座で開講された「市場経済の中の林業」の紹介です。

この授業では,林業を産業として捉えた場合に,大きく関わることになる市場経済について理解することが目的です。

とはいっても,マクロ経済やミクロ経済といった経済学の話ではありません。

林業界に関する事例やテーマを取り上げ,普段見ている林業から一歩離れて,別の視点から林業を捉えることが目的です。

講師は三菱UFJリサーチ&コンサルティング(株)の新永氏に来ていただきました。主に民間企業のコンサルティングを行っており、林業事業体や林産業に対するコンサルティングも行っております。

120213sugi1.JPG

授業が始まる前に、様々な情報で溢れかえる中、自ら考え、その情報を取捨選択しながら、行動することが重要だと、というメッセージがありました。

講義のスタイルとしては、あるテーマについて、それぞれ事前に考え、当日ディスカッションするという形で行いました。

120213sugi2.JPG

様々なテーマを取り上げましたが,その中の一つを紹介します。

「国内林業を弱体化させた原因は何か?」
 
日本の林業が低迷していると言われ続けて長いですが,林業が弱体化している原因はいったい何なのか?林業に関わるプレーヤーとしては,「林業」「林産業」「住宅業界」「行政」がいます。ヒト,モノ,カネの切り口で,その原因を考えてようという課題です。

出てきた意見としては,
・木材材価が高かったため,輸入や外材にシフトした。
・さらに材価が高かったことが,コスト削減努力に結びつかなかった。
・画一的な補助金が,努力をしない風潮を生み出した。
・そもそも林業は産業ではなかった。生活基盤の一部だった。
・賃金の上昇により,採算性が低下した。

などなど,いろいろ出てきました。

120213sugi0.JPG

さらに,

なぜ「木材価格が高かったのか?」
なぜ「賃金が上昇したのか?」

このように深堀を進めていきます。そうすると当時の社会背景や経済の構造,林業自体の長スパン性が浮き上がってきます。


特に,この先に一つの結論が出るわけではありません。しかし,今の林業について俯瞰し,自分なりの意見を持つということが大事です。

他のテーマとしては,
「マーケットインか?プロダクトアウトか?」
「水平統合,垂直統合した事例におけるメリットやデメリットは何か?」
「組織で取り組む場合のメリットは何か?デメリットは何か?」
「ゼネラリストとスペシャリストのどちらを育成すべきか?」
「林業・林産業は国際分業されるべきか?」
などを取り上げました。

 いずれのテーマも特に正解があるわけではありません。将来的に林業界で働くとしても、業界全体を見渡すことの重要性を認識し、単一の視点ではなく、それぞれの視点で考えることの重要性を強調されました。



事例やテーマを取り上げて,ディスカッションを行いましたが,自分としての意見をまとめる上で、自分が林業に対してどういうスタンス(心構え)なのかを改めて認識するよい機会になったのではないでしょうか。