広葉樹実験林の見学に行きました。標高は1000ⅿ前後あり,冬にはサラッとした雪が
降るらしく,また国内でその日一番の寒さを観測することもあるらしいです。
そんな冷温帯に位置する実験林。まずはクリやケヤキ,カツラのおよそ30年生の
人工林を見ました。クリで用材あるいは建築用の土台がかろうじて収穫できるか,
といった立木がちらほらある具合でした。
大きなミズナラの老木も見ました。その大きさと佇まいは圧倒的な存在感があり,
個人的には最も興奮した瞬間でした。今のところ,この地域はまだナラ枯れが
入ってきていないようですが,すでに隣の村では被害が出ているようです。
ここも時間の問題なのかもしれないと思うと,何ともいたたまれない気持ちになります。
枯れるのを待つだけなら,その前に伐って木材として利用すべきなのか。
枝振りや樹形を見る限り,用材として市場では高く売れないのかもしれません。
だからといってパルプや薪とかのように細かくして形に残らないものとして
使われるのは,個人的には腑に落ちません。
さて広葉樹施業は,スギ・ヒノキなどの針葉樹ほどの研究実績がなく,
また針葉樹のそれに比べると不確定な要素が多いとされています。
積極的に手をかけることが必ずしも適しているとは限らないようです。
誤った認識で手入れをすれば,用材の収穫を目指す林としてはかえって
質の悪化に陥りかねません。だからと言って,何も施さなくていいのかというと,
当然そういうわけでもないようです。
特に間伐はスギやヒノキと同じ感覚ではやってはいけないとのこと。
節の有無は建築材となる針葉樹よりも,広葉樹のほうがはるかに重要です。
それと同時に,材の長さという点では枝下高(地表から下枝までの高さ)が
重要です。一方で太さの成長は樹冠の広がりが関わってきます。
良質な材にするためには,枝下高の高さと樹冠の張り具合の両立が
鍵となるようです。また後生枝の発生を防ぐため,中層・下層木は
不必要に伐ってはいけません。
非常に大ざっぱではありますが,このように広葉樹施業においては,
よりシビアな間伐のノウハウが必要になることがわかりました。
かつては薪炭林として,あるいはパルプや用材向けに伐採された
広葉樹の林は,その後ほとんど人の手が入らないまま30~40年ちかくが
経過しています。人が手を加えることによって,用材としての価値を高める
ことが果たしてできるのか。その他にも,収穫の方法は皆伐か択伐か,
シカなどの獣害対策やナラ枯れ対策はどうするかなどなど,
広葉樹林にも課題は山積していると痛感しました。
林業再生講座2年 野村