2012年8月28日火曜日

施業プランナー 技術維持研修 第3回 開催(岐阜県立森林文化アカデミー)

平成24年度「施業プランナー 技術維持研修」の第3回 開催

 岐阜県立森林文化アカデミーで24年度から始まった技術維持研修、今回は現場を岐阜県郡上
市大和町に移して、講義と現場実習を行いました。

 今回は「流域環境を改善するための人工林施業の考え方と簡易的な森林機能評価実習」を
岐阜大学総合情報メディアセンターの篠田成郎教授に指導して頂きました。

 篠田先生は森林水文学の立場から、「上流の人工林の放置問題が下流の河川環境を変質さ
せている」ことにいち早く気づかれ、森林土壌と水を考える森林整備を研究されていることでも
有名です。



 講義に先立ち、先生から研修受講者に
  1.人工林施業は環境面からどのような貢献をしているのか?
  2.どうして環境面で貢献が必要なのか?
  3.どのようにして環境面の貢献度を自己評価するのか?
を質問され、みなしどろもどろに、・・・、しかし、回答は次にあります。

 今回の研修のポイントは
  1.人工林施業による環境への影響は、主として「土」と「水」によってもたらされる。
  2.人工林施業による環境への影響には、プラス面とマイナス面がある。
  3.森林づくりでは、プラスの影響とマイナスの影響を総合的に考えたプランニングが必要。


 今回実習で向かう郡上市の市有林(大和町古道)の放置林(L)と手入れ林(T)の土壌や
渓流水を比較。
 放置林は、パサパサな土壌で雨水を吸収しにくく、渓流水は濁り、魚も少ない。土壌は直接
素手でふれないと違いがわかりません。



 森林管理(間伐)の有無による林床土壌粒径分布の違い、流出土砂粒度分布の違いを説明
されました。
 間伐されない過密林分からは、粒径の小さい土壌粒子が渓流に流れ出てくる。間伐することで
細かな土壌粒子が流亡しなくなる。




 土壌中の水分量を比較してみると、間伐されない過密林分の土壌水分は少なく、降雨があると
一気に水が浸透して、早く渓流に流出してしまう。土壌の保水性が悪い。
 間伐された林では、降雨はゆっくり浸透し、ゆっくり渓流に流出する。降雨にともなう土壌水分の
増減が遅い。
 水分は土壌粒子の表面に保持されます。細かい土壌が多ければ、表面積が大きくなり、結果と
して多くの水分が保持される。


 森林整備する上で山の表層土と渓流をよく観察することが重要となる。
最近の傾向として、気温は上昇傾向、降水量は変化無く、しかし河川の流量は減少している。
また降雨は短期に集中して降る傾向がある。加えて、山間部ほど集中的な降雨が発生しやすく
なっている。




 次に、実際の放置林と手入れ林分とで実習です。最初に篠田教授が過去の施業履歴や森林
の状況を説明されました。

 この現場で、林分の状況や植生、野生生物の痕跡、土壌の状態を観察です。降雨が土壌中を
浸透して行くスピードなどを観察するため円筒で土壌のサンプリングも実施しました。















 
 表層土壌を5cm厚と10cm厚で円筒サンプリングしました。初めての土壌サンプリングに多少
緊張しました。
 この土壌の下面を細かいメッシュの網で覆って、円筒の上から100mlの水を入れて、浸出の
速度などを見てみます。



 篠田先生の指導のもと、2カ所の土壌で比較します。100mlの水を入れて浸出してきた濾過水が
50mlに達するに要した時間はどれほどか? また、その水の濁度はどれほどかを計測しました。

 条件の良い方の土壌は、50mlに達するのに 5分37秒、濁度は 5.3度。
 条件の悪い方の土壌は、50mlに達するのに 1分11秒、濁度は45.4度。
 各々2回目の100ml投入後の50ml浸出到達時間は、8分09秒と5分12秒、明らかな違いが見られ
たのです。

 篠田先生は最後に、「良好な森林づくりのため施業プランナーは地位や地利、地形条件によって
多様な森林施業を提案できるようにしなければなりません。生物の多様性、土壌及び水資源の保
全・維持、森林の健全性の維持のためにも森林性が重要であること」を説かれました。

 施業プランナーのため指導してくださった篠田先生、実習地を提供してくださった郡上市林務課
のみなさんに感謝いたします。ありがとう御座いました。

 以上報告、ジリこと川尻秀樹でした。