2012年9月15日土曜日

「10年後の里山と暮らしのビジョン」を集落から描く

山村づくり講座では、地域づくりの基礎科目として地域調査/地域計画の演習
があります。でも大学の授業とひと味違うのは、身近に農山村のフィールドが
豊富にあること。加えて学際的なフィールドワークやチーム編成が臨機応変に
できることです。

今年度前半は、美濃市O地区F集落の「里山と暮らし」をテーマに、3回にわたっ
て調査演習を行ってきました。最終回の今回はF集落の調査でお世話になっ
Wさんをゲストに迎えて、これまでの調査結果の報告と今後の方向性を検討す
るワークショップ型の授業を行いました。



まず、F集落の地形地質の特徴、人工林の里山と広葉樹の里山、集落・農地・
水路などのかつての姿と利用形態、ここ50年間の変化について学生が報告しま
した。ゲストのWさんの補足によって、現状の問題がなかなか好転しない背景
に、都市近郊の山村「ハーフ山村」では、外見的な開発とは裏腹に宗教観や地
域組織などに伝統的な価値観が根づよく残っていることも一因であるようだと
分かってきました。



ワークショップ第2部では、バックキャスティングという方法で、F集落の「理
想の10年後の里山と暮らし」の姿を、皆でアイデアを出し合って描きました。
里山利用、農地、暮らしと子育てなど、30代で故郷にUターンして子育てをし
ているWさんがこれまで私たちに語ってきた家族の暮らしとコミュニティの将
来像を視覚化して共有することができました。



最後に、Wさんの意見を主軸に10年後の理想像に向かって「どこから始めるか」
を考え、アカデミーが支援できる技術や活動についてのアイデアも出し合いま
した。この日参加した教員の専門分野は、里山の植物生態、キノコ、林業、文
化資源と地域計画など。専門的かつ幅広い観点から、将来像と初めにすべき事
の整理ができたことで、Wさんは「さっそくこの成果を地区の仲間に伝えたい」
と、元気に帰っていかれました。


記:嵯峨創平