2012年12月11日火曜日

オーストリア林業教育関係者 (Austrian Ossiachなど)が森林文化アカデミーを訪問

オーストリア林業教育関係者が森林文化アカデミーを訪問し、林業教育交流を実施しました。


 林業教育で有名なオーストリア。今回、オーストリア大使館を通じて、日本の森林・林業教育の
現状を把握するため森林文化アカデミーを訪問されました。


 お越し頂いたのはオーストリア農林環境水質資源管理省から2人、ブルック林業技術高等学校
校長、ウィーン土壌大学教授、ピヒル(Pichl)研修所所長、オッシアッハ研修所Ossiach)、在日
オーストリア大使館2人の計8人、それに林野庁の林業労働対策室井出光俊室長です。



 篠田学長の歓迎の言葉につづいて、オーストリアの先生方からオーストリアの森林、林業、木材
産業、教育制度などについて2時間の講演を頂きました。

 最初に、オーストリア農林環境水質資源管理省のMartin Nobauerさんが、オーストリアの森林・
林業についてお話しされました。
 オーストリアの森林は約70%近くが個人所有で、その半分以上が200ha以下の小規模所有者で
す。また、生産性の低い農地が森林に転換されているため、森林面積は編年増加しています。
 オーストリアでは年間生長量3000万m3のうち、2600万m3を利用しており、木材で年間4億円の
貿易黒字を生み出しています。

 続いて、ピヒル研修所のMartin Krondorferさんが、研修についてお話しされました。研修所で
は、(1)林業専門作業員、(2)林業マイスター、(3)バイオマス専門作業員の職業教育を実施し
ており、特にヨーロッパでは統一した教育を実施しているそうです。
 日本では、「森林バイオマス」の言葉やシステムは紹介されても、こうした専門員の育成に至って
いないのが現状です。さすがオーストリアは進んでいます。

 
 また、資格取得の研修過程では、架線集材のシミュレーターが利用され、架線集材に力が入って
いるのがよく分かります。



 最後にオッシアッハ研修所のJohann Zoscherさんが学問と林業実習をリンクさせた研修につい
て紹介してくれました。
 国外機関との連携として架線集材や路網整備などのためにPadua大学との連携、ドイツやチェコ
スロバキア、イタリアなどとも連携してカリキュラムを提供しています。研修所の演習林は730ha
り、実践的な研修を提供しています。
 研修効果は高く、1978年以降の林業事故率は劇的に減少しており、特に林業作業員の事故率
は2011年には伐採量100万Fm当たり0.7と激減してきており、継続教育の効果が顕著となったそう
です。


 午後からはJIRIが日本の伝統的林業道具の変遷と利用方法、杣人の生活についての説明、
斧や与岐、手鋸、手橇、木馬などについて、説明し、その後、付随する演習林に向かいました。



 演習林では伐採された90年生のスギ、ヒノキ丸太を見ながら、「山の神」に向かい、入山式
行いました。



 続いて、クリエーター科の林業再生講座学生が、自分たちが立てた森林経営計画を説明し、
自分たちがぶち当たった問題や疑問について、オーストリアの先生方にどう考えるかを尋ね
ました。


 オーストリアでは山腹斜面が急峻なところもあり、こんな場所では架線集材(タワーヤーダー)が
主体である。
 架線集材は1mあたり0.5~1.0m3の木材を搬出するのがコスト計算の目安。目標林型は企業の
ニーズに応じて対応すべきだが、環境に配慮して考えることも重要で、一般的には直径60~70cm
とする。


 仮に直径30cmのヒノキを育てるなら、樹冠直径は6mくらい必要となり、単位面積当たり何本成
立できるかを考えるべき。



 この林を見ると、直径30~35cmで健全に育てることを考えると、最終本数は300本/haほどで
はないかと回答されました。


 演習林の森林経営計画を立てた林業再生の吉川さんが、真剣に質問すればするほど、オースト
リアの先生方も、議論しながら回答して下さいます。


 小雪舞う寒い一日でしたが、議論はつきません。更新は天然更新を考えるべきとの意見があり、
ドイツの方々と同じ考え方でした。
 しかし間伐木の選定については、ドイツの「将来の木」施業のような考え方とは違っていました。



 オーストリアの先生達は一つ一つ丁寧に、時には図を書いて回答して下さり、学生も大満足!

 最後は演習林で記念撮影して、来年の再会を誓ったのです。



 今回のオーストリア林業教育関係者の訪問、オーストリア大使館のフィノキアーロさんや林野庁
の井出さん、岐阜県庁の藤下さんや中村さんのお陰で実現したものです。みなさま、有り難う御座
いました。
 以上、報告ジリこと川尻秀樹でした。