2013年5月18日土曜日

特別ゼミ「廃校活用の方法教えます」


小林和彦さん(廃校活用プロデューサー/まちむら交流きこう客員研究員)を非常勤講師にお迎えして、山村づくり講座専門科目「山村活性化授業経営論」でお話をいただきました。木造建築・ものづくり・IPコースの学生からも「廃校活用に関心がある」という参加者が集まり、いつもより賑やかな活気ある授業となりました。



 
小林さんは、学生時代からNICE(日本国際ワークキャンプセンター)事務局長として農山村へ入る多くの若者達をコーディネートし、その後熊本県菊池市の廃校活用施設NPO法人きらり水源村事務局長としてグリーンツーリズムや環境教育プログラムの企画開発にも関わってきた経験ち、現在は「全国廃校活用セミナー」の企画調査のために全国の廃校活用施設を駆け回っています。それだけに、講義に続く質疑応答では、「廃校活用」というテーマにとどまらない、地域社会の深い部分の合意形成や、コミュニティ・ビジネス拠点として廃校施設を経営していく実践的なポイントもいろいろ紹介くださいました。




農水省の外郭団体まちむら交流きこうの調べによると、平成4~22年度の19年間に全国で発生した廃校数は約6300件、その内活用が図られているものが70%、未利用のものが30%。その理由は「地域からの要望がない」「建物自体の老朽化」「立体条件が悪い」「財源がない」などです。中には「活用方法が分からない」という理由もあり、廃校施設をコミュニティの拠点として活用していく地域住民の意思が大きなポイントになることが分かります。詳しくは同機構運営の「廃校活用ポータルサイト」を一度ぜひご覧ください。 http://www.kouryu.or.jp/haiko/


年度別の廃校発生件数で気になるのは、平成16年度に大きな山があること。これは明らかに合併特例法による広域合併の最終年度が影響しています。市町村役場の地域見守り機能だけでなく、身近な小中学校へ子ども達が通う教育環境も、奥地集落から撤退しつつある実態がうかがえます。それだけに、廃校活用による公的サービス拠点の運営(まちづくり拠点、福祉医療サービス拠点)や起業支援(自然学校、農村食堂、芸術文化施設、都市農村交流のための宿泊研修施設など)による「地域経営」に熱意を持つ人材導入や経営ノウハウの形成に大きな期待がかかっています。


森林文化アカデミーに学ぶ学生達には、各講座で学ぶ専門技術とともに、こうした農山村の課題とニーズに応える「実践知」を磨いていって欲しいと思います。小林さんからも、アカデミーのユニークな実践教育に大きな可能性があると励ましの言葉をいただきました。


記:嵯峨創平 山村づくり講座