2015年7月16日木曜日

よそ者が地域を知るための技術と作法を学ぶ!

クリエーター科の前期共通科目(全講座の学生が履修可能な科目)「山里に聞く」が終了しましたので、まとめて報告します。

この授業の狙いは、ある地域について、外部者が地域の活性化や課題解決に関わろうとする時のアプローチとして、客観的事実の検証・調査や、個々の事実と社会との関係性をあきらかにする等という科学的なスタンスとは別に、自らが地域を理解し、地域住民の立場にたって物事を考え、行動することができるようになるために有効と思われるアプローチとして、「聞き書き」と「あるもの探し」というプログラムを体験し、その結果を地域の方に見てもらうことで、だれでも比較的容易に良好な関係づくりが可能であることを理解することにあります。


初めに、「山里の聞き書き」を全国で指導実践されている講師から、講義を受けます。



次に、具体的な進め方についての説明と質疑応答です。




「あるもの探し」では、あらかじめ地域の方にお断りしたうえで、ある範囲内を自由に散歩してもらいます。あるいは、地域の方に案内をしてもらうこともあります。


歩いた範囲の地図を作ります。 道路や河川等の基本地形を描いたら、あとは自由に自分たちが見つけた「あるもの」をイラストや写真を使って書き込んでゆきます。
今回のマップは、葛原地区を歩いたグループと、円原・北山地区を歩いたグループに分かれて作成しました。
これが成果物です。


 
 
 












 重要なことは、誰かにガイドしてもらうのではなく、外部者の視点で、興味をいだいたもの、場所等を見つけ出し、必ず写真を撮ることです。また、その場所をマップに記録することも大切です。





それぞれのペースで、景色を楽しみながら、時には畑で作業する方に声をかけ、庭先の様子をうかがったりします。 人に会ったら必ず挨拶をすることと、カメラを向けるときには撮影の了解を得ることは最低限の作法です。



山県市美山地区は昔から杉板生産地として有名です。今も製材工場が多く残っています。







葛原チームが見つけた「スズメ蜂の焼酎漬け」 こわっ!





撮影したデーターは、後日パソコンに取り込み、グループ内で共有し、発表用のスライドショーにまとめます。


「聞き書き」は、相手の話を録音し、できる限り忠実に文字に起こしたうえで、読みやすいように編集をし、ひとり1作品を目指しますが、前期の入門編では2~3人で話を聞き、分担して文字起こしをし、つなげて何度も読み返したうえで、印象に残った箇所を短編作品にして発表してもらいます。


    




話し手さんは、地域の方ならどなたでも良いのですが、できれば70歳以上で、地域の特色をいかしたお仕事や暮らし、趣味等をお持ちの方にお願いするようにしています。これは、昭和25年~30年ころの「燃料革命」の前後で、地域の生活形態が一変してしまうからです。70歳以上の方であれば、大概は、地産地消、半自給型の生活を経験されており、かつて持続可能であった日本人の伝統的な暮らしの経験談を聞けるからです。
この暮らしの記憶の継承は、地域社会の将来の在り方に大きな意味を有するだろう、という個人的な思いがあります。

こうして、それぞれが作った「あるもの探しマップ」と「聞き書き作品」の発表会に臨みました。





 
事前の「作品読み合わせ会」も大切です。
 
発表会は、廃校後の教室を活用して、地域で営業されている、「舟伏の里へおんせんよ~」 という農家レストランのある「北 山交流センター」をお借りしました。
 ありがたいことに、話し手さんも全員集まっていただきました。







今回の実習は、山県市の北山地区と葛原地区で行いましたが、山県市地域おこし協力隊の柴田さん、同、地域支援員の山口さんにはたいへんお世話になりました。 話し手さん選びと協力依頼の他、あるもの探しのサポートを引き受けていただいたので本当に感謝しております。







発表を終えたあと、作品を話し手さんにプレゼントします。
話し手さんのコメントもいただくのですが、皆さん照れながらも、喜んでくださいました。輝いている自分の姿が他人の鏡で映し出されるので、ちょっと不思議な感覚を抱かれるかもしれません。

発表後の交流会も楽しい会話が弾んでいました。「もう他人じゃないよね」、というムードです。



 



地域の皆様のご協力をいただき、今年も無事に発表会を終えることができました。
後期の専門科目では、学生ひとりがひとりの話し手さんに対し、本格的に聞き書きをする科目が開講されます。さらに深堀りした話が聴けることになるでしょう。楽しみにしています。

報告者  山村づくり講座 原島幹典