エンジニア科1年生が学ぶ『森の立地』3日目、今日は朝から下呂市にある下呂実験林に
お邪魔し、森林研究所の渡邉仁志さんに説明を受けました。
この実験林は1963年~1965年にかけて造成された実験林で、今年で植栽50年を越えました。
標高300~500m、年降水量2530mm、地質は濃飛流紋岩の場所に、スギ品種適地域性実験林、
適地適木実験林、育林技術比較実験林、スギ本数管理比較実験林などが設定されています。
なんと、私も若い頃には、この実験林に通って、年々もデータ収集した経験があります。
下呂実験林の多くはスギが植えられていますが、中にはヒノキやアカマツ、外国産マツも植栽
されれています。
飛騨川の対岸から、実験林を遠望すると、下のような写真となります。
最初に「適地適木実験林」の土壌型、BD型の森林の成長具合を観察しました。
昨日見た森林文化アカデミーの林はヒノキ林でしたが、今回はスギ林、しかも樹高は結構伸びて
います。枝下高も高い。
早速、唐鍬で土壌を掘って、断面調査です。 A0層の堆積具合は結構多い。昨日のヒノキ林とは
まったく違う、つまり樹種によって供給される枝葉の量も、分解され方も違う。
A層は腐食に富んでいたし、その層位も厚い。 A層の構造は団粒状構造だ。土性は植質壌土、
などと、一つ一つ観察。 A層に濃飛流紋岩の礫が多い。
土色帳を開いて、土色を確認。なるほど、A層は下の方まで腐食に富んだ色合いで、昨日のアカ
デミー実験林は赤い土でしたが、今日の土は褐色森林土っぽい。
次は品種比較、ここでは28品種のスギが植えられ、その50年間の成長が把握されています。
しかも50年間、個体識別されて測定されているのです。
福井県産の「味真野スギ」はここ下呂市では順調な成長をしており、評価が高い。しかしこれを
岐阜県中に植えたら問題となる。雪が多いところでは冠雪害を被ることが多い。
この場所の立地環境には適していても、他の場所の環境を考える必要がある。
ここは長野県の「クマスギ」の植栽地。クマスギは超晩生な成長をするスギで、一見すると
成長が遅くて価値がないようにも見える。しかし、小さい頃から一定のスピードで成長し、その
成長度合いが落ちることも、増すこともない。つまり一定の均一な成長をするのです。
ちなみにクマスギは約400年前に戸隠神社の参道に植えられた記録もあり、超長伐期に
向く品種なのかもしれない。
「クモトオシ」や「ホウライジスギ」もありますが、下呂市での成長は幼齢期のスタートダッシュに
勝るものの、その成長はすぐに衰えて、成長量が鈍化します。 これでは長伐期施業には向き
ませんよね。
また精英樹の「郡上2,3,4,5号」が植えられた試験地では、成長は良いものの郡上2号は
冬季の「凍裂」に遭いやすく、これも長伐期施業にはお勧めできない。
さて、本数比較実験林の一つ、イトシロスギによるha当たり2000、3000、4500、6000本の試験地
を見学。
下の写真は2000本区でしたが、試験的に間伐することなく放置した状態を保ったため、豪雪で
見事に雪害を被り、大きなギャップをつくってしまいました。もしも民有林なら、適切な間伐を適期
に実施しておけば、こんな状況にはならなかったはず。
歩道の途中には、ニホンジカが嫌うマツカゼソウやミドリヒメワラビ、カナクギノキなどが繁茂して
いました。ここも例外なく、ニホンジカのテリトリーとなりつつありました。
以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。