岐阜県は県土面積に占める森林の割合、つまり森林率が82%あります。岐阜県の森林、約87万haのうち、人工林の占める割合は45%です。全国平均は41%なので、全国的には人工林が少し多い方になりますが、広葉樹を主体とした天然林も55%あるのです。
そこで、今回の実習は多雪地帯に設定された広葉樹林(人工植栽と天然林)に勉強に出かけました。
場所は高山市荘川町六厩(むまい)にある「荘川広葉樹総合実験林」です。
森林文化アカデミーのある美濃市から東海北陸自動車道をつかい荘川ICを経て、約1時間30分、海抜約1,000mの実験林につきました。道中の河川沿いではヤマセミの姿も見られました。
本日は横井教授、津田准教授、ジリこと川尻の三人が引率し、最初に準備体操です。現地ではコマドリ、コルリ、オオルリなどの鳴き声を打ち消さんがばかりのハルゼミの鳴き声。
現場の斜面の向きは南南西、土壌型はおおむねBD(d)型です。
斜面の下から順に、カツラ、ケヤキ、クリがそれぞれ4,000本/haの密度で造林されています。植栽の時期は、カツラとケヤキが1985年の春、クリが1985年の秋ですから、約27年生の人工植栽地を見学しました。
最初に山の斜面下部、もっとも水分条件の良いところに植栽された「カツラ」の人工植栽を見学します。
除伐が遅れたためか、土壌が良い割には直径成長は思ったほど成長していません。ここで学生と先生との問答です。成長が良い個体と悪い個体との差が激しいです。
最初は「樹種は何か」から始まり、「樹型の特徴はどうか」、「どうして思ったほど成長しないのか」など、現場の樹木を見ながら考えます。
次に、ケヤキの人工植栽です。ここでも「樹種は何か」から始まり、「樹型の特徴はどうか」、「成長はどうか」、「木材としての価格は」、「木材の利用分野は」など、現場の樹木を見ながら考えます。このケヤキは成長が悪く、成長が良い個体と悪い個体との差が激しく、樹型も今一。
次に、クリです。この斜面では斜面上部に植栽されています。成長が良い個体と悪い個体との差がありますが、意外なほど成長が良く、広葉樹の中でももっとも早くに伐採して建築の土台などに利用できること。この現場ではクリが良い成績を収めていることを実感しました。
さて、ここで問題なのが、「広葉樹の造林木は大きさがばらつく」ことです。
胸高直径も樹高もにクリが最も大きく、次いでカツラが大きくなっていました。クリの成長が良いのは土壌条件が適合していたため成長が早くなる特性が発揮できたからと考えられます。これに対してケヤキの成長が良くないのは、現場の土壌がケヤキの適地でなかったためです。ケヤキはもっと土壌の良い場所でないと、思った成長が望めません。
また、どの樹種も分布の範囲がとても広く、成長が良い個体と悪い個体との差が激しかったように、造林木の大きさがばらつくのが広葉樹の特徴なのです。
広葉樹造林で最も重要な点は、「大きくなる木は樹冠も大きい」と言う点です。
樹木が成長するためには葉が多いことが有利です。その葉は枝、つまり樹冠を形成します。幹が太る、つまり直径成長と樹冠の大きさとには比例関係があります。大きな造林木ほど大きな樹冠を持ち、樹冠が高い位置にある(=樹高が高い)のです。
人工林を過ぎたところでミズナラの天然木、横井先生によると300年以上のものらしい。西坂さんと比較してみて、大きいことを実感します。
最後に、天然林の中で、広葉樹の立木密度などを実感してみます。針葉樹と違って、一本が占有する面積が大きいことも実感しました。
ちなみにこの現場は以前は一面のササ原でしたが、最近はニホンジカの食圧によって、ササが減退してきています。ニホンジカ恐るべし!
今回はカツラ、ケヤキ、クリ、ブナ、ミズメ、キハダなどの人工植栽と天然林を見学しました。やはり広葉樹の人工植栽、「難し~い。」と感じながら荘川を後にしたのです。
以上、ジリこと川尻秀樹でした。