2015年7月15日水曜日

学問ではなく、実学としての森林立地を学べ

下呂実験林で学ぶ、立地と品種、植栽密度


 エンジニア科1年生が学ぶ森の立地3日目、今日は朝から下呂市にある下呂実験林に
お邪魔し、森林研究所の渡邉仁志さんに説明を受けました。

 この実験林は1963年~1965年にかけて造成された実験林で、今年で植栽50年を越えました。
標高300~500m、年降水量2530mm、地質は濃飛流紋岩の場所に、スギ品種適地域性実験林、
適地適木実験林、育林技術比較実験林、スギ本数管理比較実験林などが設定されています。

 なんと、私も若い頃には、この実験林に通って、年々もデータ収集した経験があります。


 下呂実験林の多くはスギが植えられていますが、中にはヒノキやアカマツ、外国産マツも植栽
されれています。
 飛騨川の対岸から、実験林を遠望すると、下のような写真となります。


 最初に「適地適木実験林」の土壌型、BD型の森林の成長具合を観察しました。
昨日見た森林文化アカデミーの林はヒノキ林でしたが、今回はスギ林、しかも樹高は結構伸びて
います。枝下高も高い。


 早速、唐鍬で土壌を掘って、断面調査です。 A0層の堆積具合は結構多い。昨日のヒノキ林とは
まったく違う、つまり樹種によって供給される枝葉の量も、分解され方も違う。

 A層は腐食に富んでいたし、その層位も厚い。 A層の構造は団粒状構造だ。土性は植質壌土、
などと、一つ一つ観察。 A層に濃飛流紋岩の礫が多い。


 土色帳を開いて、土色を確認。なるほど、A層は下の方まで腐食に富んだ色合いで、昨日のアカ
デミー実験林は赤い土でしたが、今日の土は褐色森林土っぽい。


 次は品種比較、ここでは28品種のスギが植えられ、その50年間の成長が把握されています。
しかも50年間、個体識別されて測定されているのです。

 福井県産の「味真野スギ」はここ下呂市では順調な成長をしており、評価が高い。しかしこれを
岐阜県中に植えたら問題となる。雪が多いところでは冠雪害を被ることが多い。
 この場所の立地環境には適していても、他の場所の環境を考える必要がある。


  ここは長野県の「クマスギ」の植栽地。クマスギは超晩生な成長をするスギで、一見すると
成長が遅くて価値がないようにも見える。しかし、小さい頃から一定のスピードで成長し、その
成長度合いが落ちることも、増すこともない。つまり一定の均一な成長をするのです。
 ちなみにクマスギは約400年前に戸隠神社の参道に植えられた記録もあり、超長伐期に
向く品種なのかもしれない。

 「クモトオシ」や「ホウライジスギ」もありますが、下呂市での成長は幼齢期のスタートダッシュに
勝るものの、その成長はすぐに衰えて、成長量が鈍化します。 これでは長伐期施業には向き
ませんよね。

 また精英樹の「郡上2,3,4,5号」が植えられた試験地では、成長は良いものの郡上2号は
冬季の「凍裂」に遭いやすく、これも長伐期施業にはお勧めできない。

 さて、本数比較実験林の一つ、イトシロスギによるha当たり2000、3000、4500、6000本の試験地
を見学。
 下の写真は2000本区でしたが、試験的に間伐することなく放置した状態を保ったため、豪雪で
見事に雪害を被り、大きなギャップをつくってしまいました。もしも民有林なら、適切な間伐を適期
に実施しておけば、こんな状況にはならなかったはず。


 歩道の途中には、ニホンジカが嫌うマツカゼソウやミドリヒメワラビ、カナクギノキなどが繁茂して
いました。ここも例外なく、ニホンジカのテリトリーとなりつつありました。

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

課題研究ゼミ・授業風景

二年生には「課題研究」という必須科目があります。
基本的な条件をクリアしさえすれば、研究テーマは自分で自由に決めることができます。

7月7日には、クリエーター科の中間報告会が開かれ、それぞれの研究について、プレゼンと質疑応答がされた後、全学生全教員から、発表者一人一人に対して、感想や助言等を記入したコメントシートが渡されました。発表者は、とかく自分の思いや価値基準できちんと説明すれば通じるものと思い込みがちですが、なかなか思うようには伝わらない現実や、多様な感じ方や考え方を知ることになったはずです。

そこで、今回の課題研究ゼミでは、4人の小グループによる振り返りの機会を設け、指導担当以外の教員も同席し、コメントシートより丁寧に、意見や助言をもらえるよう配慮しました。







報告会前には意識できなかったことが、他者から意見をもらうことで意識できるようになりました。特に専門性の高いテーマの研究ではわかりやすさが求められ、自己実現志向の強い研究ではより社会性が問われる等、自己中心的な説明から、他者に理解してもらおうとする姿勢が伝わってきます。これは、発表に限らず、物事を進めてゆく上でとても大切な視点です。








夏休みをはさみ、9月初めに報告会が予定されており、その直後に再びこのゼミが予定されています。
次回までにどのような展開や進展があるのか、はたまたどんな課題・問題にぶつかるのか、見守ってゆきたいと思います。

                                      報告者  
教務委員会 課題研究ゼミ担当 原島






2015年7月14日火曜日

適地適木の意味を知れ

現場で見極めろ、森林立地の重要性


 今年から始まったエンジニア科1年生の『森の立地』、この授業はJIRIと森林研究所の渡邉仁志
さんとで、森林土壌を中心に、樹種や品種、立木密度、適地適木など、森林を総合的に見る目を
養います。

 単に、森林土壌を知っても、立地条件を総合的に判断できなければ意味がない。より実践的に
森林立地を考え、林業で良い提案をし、より収入を上げるための立地を見る目をつけるのです。

 初日の昨日はJIRIが、なぜ森林土壌を学ぶことが重要なのか、その森林土壌には、気候や地
形・地質、土壌生物が影響すること。日本の森林土壌の代表である褐色森林土はどのようなもの
かを講義。


 現場の土壌は、構造や土性、A層の厚さで、その栄養条件が分かる。しかもA0層の堆積具合
でも、乾燥しているのかどうかもわかる。

 つまり土壌条件によって、植林に適した樹種も違うこと、それを知ることが重要。


 それに加えて、樹木は「深根性」、「中根性」、「浅根性」があるが、こうしたことと土壌型を組み
合わせて、『適地適木』を考える。


 二日目は、森林研究所の渡邉仁志さんをお迎えして、研究所での研究成果も交えて、森林立地
全般について講義をして頂き、午前中の後半戦から演習林で実習です。

 森林土壌を調査する意味合いや、県内各所で見られる森林土壌、そして炭素量を測定して
立地をどのように評価するかを解説して下さいました。


 土地の生産力を示す指標「地位」、この地位は樹高成長量で示され、岐阜県では40年生時点で
の樹高を5段階に評価し、地位級Ⅰ~Ⅴに分けて評価しています。

 土壌型をこうした概念に重ね合わせ、立地全体をどのように評価すべきかを学びました。


 アカデミーの演習林は褐色森林土の中でも、ダントツに BD(d)型が多く、一部にBD型とBB型が
見られます。
 BD(d)型とBD型では、決定的にA層の厚さが違います。それは現場で本物の土壌断面を
見ないと理解できません。
 

 渡邉さんが地位の違いと炭素量を、スギ、ヒノキ、アカマツの3樹種について、地位級Ⅰと
地位級Ⅳで炭素量(成長量)比較した結果、スギは地位級に大きく影響を受け、アカマツは
地位級が変わっても成長にあまり影響を受けないことが分かりました。

 つまりスギは適地適木の理論に沿って、植林すべき事が重要です。


 さて、演習林で成長量比較です。
 一つの斜面で樹高と直径を比較したところ、調査区は2~3mしか離れていないのに、斜面上側
の調査区は平均直径17cm、平均樹高14m、隣接する斜面下部の調査区は平均直径17cm、平均
樹高18m、この樹高の違いは立地の違いだと言うことを、学生自身実感したのです。


 さて、午後から演習林での土壌断面調査です。 実際にBB型、BD(d)型、BD型でないかと
予測した土壌断面を掘り出しました。

 そこで土壌断面の層位区分、土性、土壌構造、土色などを判定し、スケッチし、最終的に土壌型
を判断します。 BD(d)型は学生が予想した以上に、A層が薄く、多少困惑気味。


  BD(d)型かと予測した土壌断面はA層が薄く、困りました。しかし、B層ではないかと思った土の
土色を見ると、「栄養分が含まれている」ことが分かりました。

 考えようによっては、A-B層であると判断することもできるこれは難しいね。

 最後は尾根沿いのBB型土壌、ここはA0層がしっかり残り、その下にM層(菌糸束)を確認、
土壌表層に根が多く、A層は無いに等しい、そして石礫の多い層がすぐに現れる。


 さぁ、明日は土壌型だけでなく、樹木の品種や密度で、樹木の成長がどれほど変化するのかを
見るため、下呂実験林での実習です。明日も暑いけど、みんな頑張ろう!

以上報告、JIRIこと川尻秀樹でした。

自力建設のメンテナンス(メンテナンス実習)

 夏期休暇前、最後のメンテナンス実習。
急に暑くなった太陽のもと、一期生の自力建設「森の中の四寸傘」のデッキ修繕です。
今日も3寸5分角の材を2本現地まで運び、墨付け、加工です。
車も入れないし、電気もない。すべて手運びと手刻みで進めていきます。


 なんとか今日で土台敷を完成させようと、意気揚々。作業開始です。


ほぞ穴の失敗もありつつ、補修を行い、何とか完成!!
これで、また10年は持つようになるか???

この授業の前半には、学生たちと、アカデミー本体のシロアリ被害調査を行いました。残念ながら数か所で蟻害進行中の箇所を発見してしまいました。

報告書をつくって、事務局に提出しましたら、早速対処していただき、駆除作業が完了しています。

その時の調査から、シロアリの好みそうな部材が直感的に感じ取られ、「これはやばそうだ!!」というのが、薄々わかってきています。



 そこで、秘密兵器。サンプルでいただいていたホウ酸(八ホウ酸二ナトリウム四水和物)を固めたスティックをやばそうな部材数本にドリスで穿孔して埋め木でふさぎました。
 ホウ酸は揮発せず、人体にとって、ほぼ安全な防腐防蟻材で湿気を吸うことで注入した穴から木材に含浸し効果を発揮します。


 本来は、ここまでの雨がかりには使用しないので、どの程度効果が発揮されるか未知数ですが、経過観察してみたいと思います。


今日で、デッキの土台が完成。後は板が張られればデッキが復活します。

今年も1カ月前で満員御礼!木育指導者セミナー        ~子どもが自分でつくり園で使う箱イスづくり研修~

「根幹は平和教育」というレッジョ・エミリアでの学びで意識化したこと

五感を育む前に先ず身体から

木と樹が即つながるアカデミーならではの研修

美濃市の民度も味わう夜の研修


皆様、今年もNPO法人日本グット・トイ委員会との共催で行うセミナー。
アカデミーの卒業生であり、グット・トイ職員でもある遠藤智史君とツイン講師で開催する
楽しみなセミナーであります。

お蔭さまで開催1か月前にも拘らず受付終了!
ありがとうございました。

2泊3日の20人限定研修。
本年度の研修はさらに大きく2点ブラッシュアップしました。

一つが、昨年11月にレッジョ・エミリア・アプローチを学んできた松井が、
日本でも改めて思い出し意識化したい価値観を取り入れた研修です。
研修を受けたローリス・マラグッツィ国際センター

受講を検討中の方は、あなたのインスピレーションとタイミングを信頼し、申込はコチラから

前年度は、東は千葉・東京・群馬等関東圏から九州まで全国から本気印の受講者が20人集まりました。
この時はなんと現役の大学生が初参加!
その意識の高さに頭が下がりました。日本の将来は明るいです。

岡山から参加の大学4年の女子学生。協力する喜びを体感!



五感を育む以前に、先ずは身体を育む・・・

もう一つが、松井が1年間掛けて、身体の学びに取り組みブラッシュアップした研修の成果を伝授します。
道具は身体の延長です。
日本文化の伝承のスタイルでもある「型」から入る学びを体感して頂きます。

ノコギリやカナヅチを自由に扱う身体の使い方や、「コツ」や「カン」をつかんで帰って下さい。
つまり、暗黙知の伝承であります。


愛知から参加の大学2年生。身体に無理なく姿勢良く!
 
ボランテアスタッフとして参加の京都からの大学4年生。姿勢をマスター!
 
岡山から参加の大学4年生。まっすぐ打てています。


演習林とキャンパスが一体化した稀有な教育機関森林文化アカデミー


アカデミー内には、暮らしで使われる樹木もあちらこちらに植わっており、使う木と樹がすぐにつながる・・・
当に空間全体が学ぶ環境なのです。
そこでの樹木ウォッチングは毎年アカデミー学生が担当し大人気!
学生にとっては指導者としてのスキルアップのための重要な実践の場であります。
受講者の質問攻めにあい、予定の研修時間をオーバーしてしまいました。
思わず、学生からこぼれる言葉は・・・

「これ以上学びたいなら、入学して学んで下さい!」

 

そして、多くの木材に出会う体験が、教師の背景をつくり、伝える自信につながります。

 

2期生は、夜の散歩も充実! 民度の高い美濃市の町並み、清流長良川も体感したようです。
ライトアップした美濃橋。本当に美しいですね・・・
セミナー中もっとも濃かったのは、人のつながりでしょう。
実際に2期生たちは、お互いのイベントをサポートしたり、松井の研修を様々な機会にサポートして頂いています。
点が線になり面になっているのです。つながりに感謝します。


ところで、美意識はどのように育まれるのでしょう?
このごろそんなことを良く考えます。

空間は第3の教育者。

アートの国イタリア、レッジョ・エミリアで出会い、松井自身が改めて意識した言葉です。

そして、木育は平和教育であること
つまり、人と木のいのちを大切にする教育であること

本年度、皆さんと共有したい価値観であります。

椅子という空間にも美意識はあらわれる!



ものづくり講座
松井勅尚

2015年7月12日日曜日

林業機械の操作

農林高校生を招いての林業機械操作実習


 森林文化アカデミーエンジニア科2年生と、クリエーター科林業再生講座2年生の『林業機械
操作実習』、今回は岐阜県下の農林高校に声を掛けて、スイングヤーダやグラップル、フォワーダ
の操作体験を実施しました。
 朝一番には、簡単な打ち合わせの後、全員で「ゼロ災で行こう!」と指さし呼称。
 続いて、現場のスタート準備です。


 スイングヤーダ担当の住田くんと仙田くんは、グリースアップを入念に実施。そして、異常ヵ所が
ないかどうかのチェックを同時進行。


 ヤエさんは、女性ならではの繊細なグラップル操作で、西澤くんの運転するフォワーダに昨日の
積み残し丸太を積み込みです。


 今日は岐阜農林高校、加茂農林高校、飛騨高山高校から生徒さんと先生が来てくれました。
午前中は岐阜農林の生徒さん7名と先生が来られ、杉本先生が現場の状況を説明。


 早速、フォワーダ班、グラップル班、スイングヤーダ班に分かれて、体験です。
フォワーダ班は運転操作の練習が主体ですので、丸太は少量ですが走行練習です。


 グラップル班は造材とグラップル操作に分かれ、グラップル操作はヤエさんが指導。馴れない
機械操作に戸惑いながらも、農林高校の生徒さんは頑張って挑戦してくれました。


 少し馴れてくると、後ろに控えるフォワーダに丸太を積み込みです。丸太のどこをつかめば、
バランスが取れるのか。それを見極めるのも一苦労です。


 スイングヤーダ班は池戸先生が指導して下さり、HALラインとHALBACKラインの操作です。
山の現場(先山)の人たちと無線で交信し、機械操作が進みます。


 先山で荷掛けワーヤーを掛けたヒノキの全木集材です。下の写真の中央にある緑の塊が樹冠
です。

 荷下ろし場までヒノキの全木を下ろし、ここでワイヤーをゆるめて、荷掛けワイヤーを外します。
安全な操作とは言っても、初めての機械操作にみな緊張気味!

 本日も本当に暑い暑い一日でした。実際に現場で仕事をされている方々の足下にも及びません
が、学生達も生徒さんも、そして教員もそれなりに頑張りました。ご苦労様でした。
 
異常報告、JIRIこと川尻秀樹でした。